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豚のと畜検査に関する連邦食肉検査規則の最終改正案を公表(米国)

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 9月17日、米国農務省食品安全検査局(USDA/FSIS)は、豚のと畜検査に関して、(1)微生物検査の改良、(2)新しい豚のと畜検査システム(NSIS : New Swine Slaughter Inspection System)の導入により、と畜施設職員に対し一部の検査権限を移譲するという、新しい連邦食肉検査規則の最終改正案を公表した。この改正は約50年振りの大きな改正であり、生産量及び輸出量が増加傾向にある堅調な米国産豚肉に対する需要に応えるための生産性の向上という米国の豚と畜現場における課題を解決することが期待されている。
 USDAのパーデュー長官は最終改正案について、「NSISは時代遅れの規則を撤廃し、企業の革新と食品の安全性を確保することが可能である。NSISはUSDAが1997年以降、食品の安全性を改善するために科学やデータに基づく知見を集積してきた集大成である。」と述べている。

主な変更点

 ―NSISを導入することにより、FSIS検査官の業務をと畜施設職員に一部移譲することが可能となり、生産ライン上のFSIS検査官数を削減し、FSISの職員をより包括的な監視業務に配置することが可能となる。

【と畜施設職員への移譲する主な業務内容】
・施設職員はFSIS検査官によると畜前検査の前に、と畜に不適な家畜を分類・除外し、と畜後検査の前にと体の不適切部位を特定・除去しなければならない。
・施設職員はタグやタトゥーまたはそれらと同等の確認方法でと畜検査前に不適格と判断した家畜を識別しなければならない。そして、不適格な家畜を連邦規制に従って適切に処分し、市場に不適格な家畜由来の豚肉が流出しないよう努めなければならない。これらの工程はHACCPシステムにより文書化された手順に従って実施され、常に改善しなければならない。
・施設職員は不適格と判断された家畜およびと体の数と除外した理由を毎日文書で記録、保管しなければならない。
・施設職員は家畜やと体からアフリカ豚コレラ、豚コレラ、ニパウイルス等の海外悪性家畜伝染病を疑う所見を認めた場合、FSIS検査官に通知しなければならない。

―と畜施設はNSISの導入により、ふん便によると体汚染防止と微生物検査のサンプリングを確保することが可能な生産ラインのスピードを独自に設定、加速させることが可能となり、パッカーの効率が向上することとなる。ただし、FSIS検査官は生産ラインを遅らせたり停止させたりする権限を保有している。
 今回の改正案のうち、(1)微生物検査の改良については、今後は米国内に存在する豚のと畜施設611か所すべてで適用されるべき内容となっている。ただし、(2)NSISの導入は任意プログラムの予定であり、同プログラムの適用は施設の自主性に任されている。現在、5施設でNSISが試験的に運用されており、今後、40施設程が運用可能であるとみられている。
 NSISを導入することにより、(1)現在の1時間当たり1,100頭までとされている生産ラインの速度をさらに加速させること、(2)内臓除去のラインの再構成が可能となる柔軟性を与えること、(3)品質確認検査の役割を連邦の食品安全検査官から施設職員に移譲することが可能となる。
 今回の最終規則が連邦官報に掲載された後、大規模施設は90日以内、中規模施設は120日以内、小規模施設は180日以内と、と畜施設の規模に応じて新しい必須のサンプリングと検査要件を順守するための移行期間が設けられる。また、と畜施設は、官報掲載後から180日以内にNSISを導入するかどうかを地域事務所に通知する必要がある。
 今回の規則の改正により、と畜施設が検査する病原体の種類を独自に設定することが可能となる。(一般生菌数、腸内細菌、大腸菌群、総大腸菌数の病原体等から設定すると推測される。)これは、これまでの細菌検査の結果として、特定の病原体が常に検出されなかったとしても、その他の病原体については不明であることから、食の安全を包括的に考慮した場合、各施設において独自に検査すべき病原体を設定することが食品安全の確保につながるとの考えからである。一方、細菌検査のための検査頻度と採取ポイントは規則で定められており、と体から内臓除去前と冷却後の2カ所でサンプルを収集し、微生物検査を行うこととされている。冷却前に脱骨を行う業者は、冷却後の代わりに最終洗浄後のサンプリングが必要となる。
 FSISはNSISの導入、と畜検査の有効性の改善、人的資源の省力化、内臓除去のラインの再構築などにより、生産ラインの速度を最大限に向上させる業界の革新の実現を目的としている。と畜施設はHACCP、衛生標準作業手順(SSOPs)およびその他の前提条件となる要件を導入、実施、維持しなければならず、サンプリング検査も改良されるため、更なる食品安全の向上につながると考えている。

業界団体は改正案を称賛

 全国豚肉生産者協議会(NPPC)の会長であるへーリング氏は、「米国の豚肉生産システムは安全性、品質、安定した供給を高めながら、新しい運用や科学技術を次々と導入しており、世界がうらやむ制度を構築している。新しい検査体制は、21世紀の産業を反映する規則を成文化している。」と述べている。
 また、北米食肉協会(NAMI)の会長兼CEOであるポット氏は、「最終規則の詳細はまだ確認できていないが、FSISは科学と長年の経験に基づきNSISを作成し、消費者へ安全な豚肉を供給することを保証し続けるだろう。NSISの導入を決めた企業は、食品安全の革新の機会を享受し、消費者と業界全体に利益をもたらすことになる。消費者にはより安全な製品を提供でき、労働者の安全も保証することが可能となる。」と述べている。
 今回の改正は、米国産豚肉の生産量が年々増加していることを背景に、豚のと畜施設の新設も近年行われており、豚の生産能力の拡大と食品の安全性の確保を両立するための約50年ぶりの大きな改正であると考えられている。
現地報道によれば、今回の改正に関して、大腸菌に特化した微生物検査が撤廃されることや、FSIS検査官の人員が削減されることに対して消費者および労働者団体から不安や反対の声が挙がっているが、FSISは科学とデータの蓄積に基づく改正であることや、一部の業務を施設職員に移譲するものの、最終的な検査権限や生産ラインの処理速度を決める権限はFSISが引き続き保有するため、効率性と安全性を両立した規制であり、問題はないと主張している。約50年ぶりに改正される規制が、どのように運用され、食中毒等の食の安全性にどのような影響を及ぼすのか、今後の行方が注目される。
【調査情報部 平成31年10月4日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際情報グループ)
Tel:03-3583-4397



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