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豪州東部の洪水による畜産業への影響

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 2021年3月18日頃から23日頃まで断続的に豪州東部を襲った100年に一度と言われる大雨により洪水被害が発生し、約1万8000人が避難するという事態となった。この被害について、豪州連邦政府やニューサウスウェールズ州(以下「NSW州」という)政府は、4月14日時点で最終的な被害額を公表していないが、豪州気象庁(以下「BOM」という)が豪州全土の地図上に示した2021年3月の降雨量によると、NSW州の北東沿岸部分で多くの降雨が確認されていることがわかる。
図 2021年3月の豪州における降雨量
 ただし、豪州の畜産現場に近い関係者の見解によると、被災した農家は一定数あるが、洪水被害は限定的かつ短期的であり、豪州国内の肉用牛生産および酪農業に大きな影響を及ぼすものではないとのことであった。
 またBOMは、2021年3月30日にラニーニャ現象が終息したと発表しており、同4〜6月の向こう3か月は降雨量など平年並みになると予測している。

豪州肉用牛および酪農業全体への影響

 今般の洪水被害が、豪州全体の肉用牛生産および酪農業へどれほどの影響があるかなどについて、関係各所に独自取材したところ、概要は以下の通り。

・MLA(豪州食肉家畜生産者事業団)
 今般のNSW州北東部の洪水被害は、一部では物流の問題が生じるなど、限定的な影響もあったが、クイーンズランド州(以下「QLD州」という)が生産の主体を占める豪州の肉用牛生産の全体に影響を与えるほどのインパクトはない。また、操業を停止したと畜場は、もともと予定されていた定期メンテナンスによるものと聞いている。
 豪州の肉牛取引価格の指標となる東部地区若齢牛指標(EYCI)価格の昨今の高騰は、洪水により引き起こされたものではなく、干ばつに起因する肉用牛群の縮小によるものであり、3月の洪水が発生する前から続いているもの。牛群の再構築が完了するまでの今後2、3年はこのEYCI価格の状況は続くとみられる。

・トーマスエルダーマーケッツ(豪州畜産調査会社)
 NSW州の洪水は、一部の生産者に影響を与えたが、牛の供給への影響は、数年前のQLD州北部の洪水に比べればはるかに少ない。このQLD州の洪水では50〜60万頭の牛が流され、QLD州牛群の5%、豪州全体の牛群の2.3%が被害に遭った。今回の洪水では、牛の価格に与えた影響も限定的かつ短期的なものであり、豪州の牛肉・乳製品業界に目立った影響を与えることはない。

・Dairy Australia(デイリー・オーストラリア)
 今般の洪水は、被災地において約150〜200戸の酪農家が被災し、約20〜25戸の酪農家が深刻な影響を受けた。現在は水が引いて清掃を行っているが、牛の歩行不全や乳房炎への対応が被災農家で課題となっている。ただ、豪州国内全体の牛乳・乳製品の生産に何ら影響を及ぼさないものである。
 デイリー・オーストラリアでは、現地獣医に技術資料の提供やウェビナー、酪農有識者による現場のサポートを支援している。また、洪水復興のためのアドバイザリーサービスを展開しており、経営再開に向けた助言や計画づくりなどを支援している。

豪州連邦政府等の動き

 豪州連邦政府のDavid Littleproud農業・干ばつ・緊急事態管理担当大臣は今回の畜産農家の被害について、「洪水で失われた家畜の数は、水が引いた後に評価されるだろう。この評価が得られれば、連邦と州のレベルで、復興の観点から対応を調整することになるだろう。農業者だけでなく、今回の災害で影響を受けた中小企業等にも支援していく。」と述べている。
 豪州連邦政府とNSW州政府は、共同で出資を行い、2021年3月31日から、被災した農家に対し、最大で7万5000豪ドル(645万円(1豪ドル=86円)(3月末TTS相場))の洪水復旧支援金の支給を開始した。これに加え、2021年3月の暴風雨や洪水の影響を受けた農家や中小企業を対象に、緊急の支援を必要としている場合は、最大13万豪ドル(1118万円)の低利融資を受けることができる。また、NSW州政府では、緊急洪水対応として、緊急用飼料の供給、動物の評価と獣医師による支援、家畜の安楽死と処分、飼養管理に関するアドバイスなどを行っている。

【参考1】
・豪州連邦政府による被災者への助成(2021年4月14日閲覧)
 https://www.servicesaustralia.gov.au/individuals/subjects/new- south-wales-floods-march-2021
・NSW州政府の洪水に関する情報サイト(2021年4月14日閲覧)
 https://www.dpi.nsw.gov.au/climate-and-emergencies/floods

 なお、現地報道によると、豪州小売大手企業であるウールワース(Woolworths)社は、被災地であるマニング・バレー(Manning Valley)の酪農家に対し、今回の洪水により廃棄等を行った生乳の代金を支払い、酪農家の経営継続を支援するとしている。

【参考2】
畜産農家の被害について触れた現地報道は以下のとおり。

現地報道

・ABC NEWS(2021年3月22日)
 NSW州第一次産業省の災害復旧担当官であるSimon Oliver氏によると、「牧草地が浸水してフェンスが水没し、家畜が流されたり水に取り残されたりしている。」と述べている(2021年4月14日閲覧)。
https://www.abc.net.au/news/rural/2021-03-22/nsw-farmers-assess- flood-damage/100020588

・The Guardian(2021年3月23日)
 今回の洪水は、NSW州中北部沿岸の農家に大きな打撃を与え、多くの農家が数時間のうちに財産や作物、貴重な家畜を失った(2021年4月14日閲覧)。
https://www.theguardian.com/australia-news/2021/mar/23/a-flood- hit-farmers-lament-for-his-lost-cows-its-the-helplessness-of- hearing-them-bellowing

・ABC NEWS(2021年3月31日)
 今般の洪水により、酪農家のPaula Gray氏の乳牛群に大きな影響を与えた。牛が乳房炎になり、すべての牛が歩行不全となっており、牧草地は泥に覆われた(2021年4月14日閲覧)。
https://www.abc.net.au/news/rural/2021-03-31/flood-affected- farmers-say-no-normal-any-more/100037970

・farm online(2021年4月13日)
 酪農家のJulian Biega氏は、以前は220頭の牛から1日に約5000リットルのミルクを搾乳していたが、干ばつに続き山火事が発生し、牛群は130頭にまで減少した後、洪水の被害を受けて105頭になった。残った牛のうち、31頭は感染症の治療を受けており、現在、農場の多くが泥に覆われ、未だに立ち入ることができない(2021年4月14日閲覧)。
https://www.farmonline.com.au/story/7206075/how-a-dairy- rebuilds-after-floods/?cs=14138
【調査情報部 令和3年4月16日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:調査情報部)
Tel:03-3583-9530



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